stabucky blog

ゴムの焦げた匂いがする車

何だか、燃費が悪いなあ、と思っていた。加速が悪いなあ、と思っていた。私の車のことである。セルフサービスのガソリンスタンドで入れたからか、冬で気温が低いからか、などと考えてはいたが、それほど気にはしていなかった。

今日、週休2日の人にとっては3連休の最終日。夜の10時過ぎ、私は千葉県から神奈川県に向かっていた。行楽帰りの人で、首都高速は渋滞するかと思ったが、意外にも渋滞がほとんどなかった。首都高速の環状部分から渋谷に抜けたあたりで、車の具合が悪くなった。私の車は5速のマニュアル車である。5速にギアを入れて走っているのだが、3000回転で80キロしか出ない。そのうち、4000回転でも80キロ。用賀の料金所を抜けると東名高速で、100キロ以上出して当たり前のところだ。この辺りになると、もう5000回転でも80キロしか出ない。ブラック魔王のバカ車か。そのうち止まって「おい、ケンケン」てなことになりそうだ(ケンケンというのは日本で勝手に付けた名前。本当はスターキーというらしい)。
フルートを吹くと100の息を吐いたうち20が音になるという感覚らしい。私の車もまさにそんな感じだ。音は800くらい出てるけどな。

横浜青葉という出口があるので、そこで高速を降りることにした。料金所で一度停止するとモンスターカーみたいにエンジンをふかさないとスタートしない。うわあ、変な焦げた匂いがする。何とか高速道路から出た。信号で止まるともう動けないような気がするが無情にも赤信号。ふかす、ふかす。
警察署が見えたので入ってみる。駐車場に車を止めて建物の中に入るとお巡りさんが怪訝そうに寄ってくる。「車が動かないんですが」と訴えるが「どうしようもないね」と冷たい態度。「知り合いを呼べば」なんて全く無茶なことをいう。仕方がないのでJAFの電話番号を教えてもらう。わざわざ調べて教えてくれた。

さて駐車場に戻ってエンジンをかけてみる。「ひょっとして動いたりして。もうちょっとで自分の家だから帰れちゃったりして」という期待をしながらバックしようとするともう駄目。さっきまではモンスターカー並の轟音を上げながらも動いてくれたのにもう全然、駄目。あきらめた。教わった番号にかけてみる。携帯電話って便利ですね。やっと役に立ったような気がする。JAFの人が出る。口調は丁寧だが言うことは厳しい。「助けに行くが今から1時間半待ち」だと。んがっ。仕方ない。幸いエンジンはかかるから凍えることはない。
待っている間、あまりに暇なので、外に出て偵察することにした。車に乗っていたから薄着である。上着を持っていない。それでも外に出てみた。何もない。コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、一切ない。あるのは警察署だけ。んがっ。あきらめて車に戻り寝ることにした。

午後12時。電話をしてから1時間ほどでJAFの車がきた。「どうしましたか」というので、「多分、クラッチが空回りしていると思う」などと分かったふりをして答える。「近くのディーラーに運ぶ。ここからだと横浜だ」などと言う。「私の家とは全く逆だ」と言うと、地図やカーナビゲーションや携帯電話を駆使して、ディーラーを探してくれた。私はトヨタ車に乗っているのでトヨタのディーラーに運ぶらしい。すると私の家の近くにトヨタカローラのディーラーが見つかった。歩いて15分くらいのところにある。私はその存在を今まで知らなかった。まずは安心。そこに運んでもらうことにした。
JAFの車に乗っていたのは、背の低いコロコロした感じの男。トラックから降りると「ああ、この匂い、クラッチかもしれないですね」という。私の当てずっぽうもたまには当てになる。しかし、この人、全く、修理してくれる気配はない。私の車は駐車場に頭から突っ込んでいる。
「前から押すのでハンドル操作とブレーキ操作をして向きを変えてください」
馬鹿に丁寧だ。トラックの後方に車をセットすると、レッカーの準備だ。てきぱきと作業をしている。「寒いから、中に入っていて結構です」とまた馬鹿丁寧だ。私があまりに寒そうな格好をしていたからか。
10分ほどで準備完了。いよいよ牽引だ。「ご主人と、奥さん。どちらか一人はトラックの方に乗ってください」という。「赤ちゃん、いるんですよ」と言うと、この人、やっとそのことに気づいた。「じゃあ、奥さんと赤ちゃんは車に」

ゆっくりとしたスピードでトラックが走り出す。私は助手席に乗る。床にはバッテリーが置かれていたりして非常に狭い。「寒いなあ」と思って運転席を見ると窓が開いている。牽引している車に異常があったときにすぐ気付くためだろう。車の中でいろいろと話をした。今回は作業料をもらうが、JAFの会員になると5キロまでの牽引はタダだとか、鍵のとじ込み、バッテリー上がりもタダだとか。高速でJAFを呼ぶと、JAFの車の高速料金も払わなくてはならないし、インターチェンジまで最低15キロはあるし、とか。
と言っているうちにトヨタのディーラーに着いた。午前12時半。当然、誰もいない(と思ったら警備員はいた)。故障した車は勝手に置いていくらしい。もちろん、連絡先を書いた紙を、フロントガラスのところに置いておくし、鍵は封筒に入れて建物の中に投げ込んでおく。「もう少し行ったところにあるトヨタのディーラーならば、鍵を持っているので駐車場の中に入れておくこともできるのですが」などというが、別に路上駐車でも私はかまわない。
作業が終わり、料金の精算をした。入会金と年会費の6000円を含み、2万円。急な出費で痛いが、高速道路で故障していたら、こんなものではすまなかったと思い、自分を納得させる。ま、また、こんなことがあっても、今度はタダだ。
「家まで、車でどれくらいですか」という。狭いので一人しか乗れないが、赤ちゃんがいるので、特別に乗せてあげよう、というのだ。しかし、その好意だけいただくことにして、歩いて帰ることにした。仕事とはいえ、とても親切な人でよかった。

途中で赤ちゃんは泣き出すし、寒いし、大変だったが、午前1時過ぎに家に着いた頃には「なかなかおもしろい経験をした」と思い始めていた。

関連記事

[2001-02-12]

生活